乳がん

2020年1月28日

日本における乳がん

 水曜日午後10時から読売テレビで放送されていた「87%」というテレビ番組をご存知ですか?
私は見たことはありませんが、これは初期の乳癌を題材にした番組で、87%というのは、初期の乳がんの5年生存率(手術後5年経った時点で生存されている患者さんの割合)を表しているとの設定だそうです。乳がんは現在、最も女性に身近ながんとなってきましたので、このような番組が作られたのでしょうか?
乳がんとは、乳房の中の母乳を作るところや母乳を乳首まで流す管から発生する癌であり、わが国では1996年には女性の30人に1人が乳がんに罹っていたといわれ、悪性腫瘍罹患率で第1位となりました。その後も増加し、現在では女性23人に1人の割合で乳がんに罹っているという報告もあります。乳がんの発生は、20歳過ぎから認められ、30歳代ではさらに増え、40歳代後半から50歳代前半にピークを迎えますので、若いからといって安心できません。乳がんによる死亡も増加の一歩をたどり、最近では1年間に約10000人が亡くなっておられます。乳がんが発病した人の30%くらいが乳がんで死亡されているということです。乳がんによる死亡率は日本のみが増加傾向にあり、アメリカ、イギリスでは減少傾向です。これはなぜでしょう?マンモグラフィ検診(乳房のレントゲン検査)の普及や啓蒙運動により、乳がんが早期に発見・治療されるようになったためであると言われています。乳がんの大きさ別の10年生存率は下記の通りで、小さい時点で発見、手術を受けるほうがよい成績です。"乳がんは日本では増加してきた病気ですが、早期に見つかると助かることが多いので、検診を受けましょう!"ということです。

乳がんの大きさ (cm)~11.1~22.1~33.1~44.1~55.1~
10年生存率 (%)927364534141

 乳がんの検診では、マンモグラフィ検診が有効です。大阪市の乳がん検診ではマンモグラフィが導入されています。マンモグラフィとは、乳房専用のレントゲン検査で、透明の圧迫板で乳房を上下からと左右からはさみ、薄く引き延ばして撮影します。受けられた人の話では少し痛いということですが、この検査では触診ではわからないような小さな乳がんや腫瘤を形成しない乳がんを発見できることが多いため、検診には優れた方法です。もちろん超音波検査も有用な検査です。このような検査を定期的に受けることが乳がんの早期発見に役立ちますが、乳がんは自分で気をつけていれば早期に発見できますので、毎月定期的に自己検診を行うことも必要です。しかし、自己検診を行っている人は日本では15~30%だということだそうです。
自己検診とは乳腺を自分で触ってしこりがないかどうかを確かめる方法ですが、骨を触ってしこりと間違えたり、乳腺全体をしこりと間違うことは誰でも一度は経験するようです。正確な触り方を知っておくことが必要ですので、その方法(名古屋第一赤十字病院外科の加藤先生の指導)を書いておきましょう。
  乳癌の自己検診は、気が向いた時いつしてもいいのですが、入浴後、脱衣所で、鏡の前に立ち、タオルで体を拭くついでにするのがいいと思います。

(1)まず、乳房を見てください。左右対象になっていますか?どこか引きつれた感じはありませんか?
(2)次に、乳房の内側を触ってみましょう。人差し指・中指・薬指3本の指先をそろえて指の腹で乳腺を肋骨に押し付けるようにして触って見てください。正常の乳腺組織は、脂肪の下にちょうど生ゴムかコンニャクのような弾力で触ります。捜すべきしこりは「石ころのようなカチカチのしこり」です。本当の病気は異様な硬さですから誰にでも容易にわかることと思います。
(3)乳腺の外側も同様にして十分くまなく触って見ましょう。この際、脇の下も触ってみる価値があります。脇の下のリンパ節は、乳癌が転移した場合にも腫れますが、それ以外にもバイ菌が体に入ったり、様々な全身疾患で腫れることがあります。
(4)最後に乳頭をつまんでみましょう。出血したり、異常な乳頭分泌がないことを確かめてください。乳頭直下は繊維成分が多い為、周囲に比べてすこししこった感じはありますが、それでも石ころほどの硬さではないはずです。

 こうした自己検診をしてなんらかの異常を感じたら、気軽にお近くの病院の外科に相談に行ってください。